不動産クラウドファンディングで投資した利益の税金は? 確定申告が必要なケースとやり方を解説!

不動産クラウドファンディングで出た利益の税金

「不動産クラウドファンディングで利益が出たら確定申告をすべきなのだろうか」と疑問に思っている方も少なくないでしょう。確定申告が必要か否かはケースバイケースです。この記事では、不動産クラウドファンディングで得た分配金の確定申告が必要なケースや確定申告のやり方などを解説します。

目次

不動産クラウドファンディングの利益は雑所得

確定申告書

不動産クラウドファンディングの分配金、利益は所得税法の区分では雑所得です。ここでは税法上の位置付けについて解説します。

雑所得とは

雑所得とは、所得税法に規定される10種類の税区分の一つです。他の9種類の区分に該当しない所得が雑所得となります。雑所得以外の9種類の区分を簡潔に解説すると以下のとおりです。

・事業所得…農漁業、卸小売業、サービス業など事業による所得

・不動産所得…不動産上の権利や船舶・航空機の貸付けによる所得で事業所得や譲渡所得でないもの

・利子所得…預貯金等の利子や運用投資信託の収益分配による所得

・配当所得…株主配当などによる所得で運用投資信託によるものでないもの

・給与所得…給与や賞与などによる所得

・退職所得…退職金や厚生年金基金の退職一時金などによる所得

・山林所得…取得後5年を経過した山林の伐採、譲渡による所得

・譲渡所得…土地や建物、会員権などの資産の譲渡などによる所得

・一時所得…上記8区分に該当しない所得で勝馬投票券の払戻金や懸賞金、損害保険の満期返戻金など一時的な所得

不動産クラウドファンディングの利益以外で雑所得としてよく知られているのが、公的年金や副業で行っているライティングの原稿料などです。また、各区分に該当しそうな所得であっても、条件により他の区分に該当するケースがあります。

税額の計算

雑所得は総合課税制度の対象であり、他の所得とまとめて所得税額の計算が行われるため、雑所得単体での税額は求めません。税額計算の根拠となる雑所得の計算は、公的年金等、業務に係るもの、それ以外のものでそれぞれ行なわれます。

公的年金等は年金等の収入金額から公的年金等控除額を、業務に係るものとそれ以外のものはそれぞれの必要経費を差し引いたものが各雑所得です。各雑所得の金額を合算したものが最終的な雑所得になります。X(外国為替証拠金取引)の差益なども雑所得ですが、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税の対象となっており、総合課税制度の対象である不動産クラウドファンディングなどとは別扱いです。

不動産クラウドファンディングの分配金は源泉徴収の対象

不動産クラウドファンディングでは源泉徴収が行われます。源泉徴収とは、出資した投資家への支払いをする事業者(運営会社)が、支払いの際に所定の税額分を差し引いて納税する制度です。不動産クラウドファンディングの源泉徴収税率は20.42%(2024年3月時点)となっており、内訳は所得税20%と復興特別所得税0.42%(基準所得税率である20%の2.1%)です。

任意組合型は不動産所得になる

不動産クラウドファンディングでは、主として匿名組合型について語られることが多いといえるでしょう。匿名組合型の分配金、利益は雑所得となりますが、任意組合型の分配金、利益は不動産所得です。

複数の投資家が事業者が募集して運営するファンドに出資し、利益を得る匿名組合型とは異なり、任意組合型では複数の出資者が共同して不動産取引を事業として行い、その執行を一部の人に委任します。

雑所得が20万円を超えると確定申告が必要

確定申告書を記入する女性

雑所得に区分される所得が20万円を超えると確定申告をしなければなりません。確定申告が必要となる、給与所得以外の所得が20万円を超えた場合に該当するためです。

雑所得は合算する

雑所得に分類される所得は、既に税額の計算で述べたように、分配金以外も合算して所得金額を計算します。したがって、少額の資金で始めた不動産クラウドファンディングだけでは20万円を超えていなくても、合算して超える場合は確定申告が必要です。

また、総合課税のため基礎控除や医療費控除などの各種控除を適用した結果、最終的な納税額が源泉徴収された税額を下回るケースがあります。この場合は税の還付(払い過ぎた分を受け取る)を受けることになります。

住民税との関係

所得税は国税ですが、税金は国税だけではなく地方税もあります。住民税の申告が必要なケースでは忘れずに市役所等へ申告しなければなりません。ただし、確定申告の内容は市区町村に送られます。そのため、確定申告をした場合は住民税の申告を別途行う必要はありません。

そもそも確定申告が必要なケース

ノートPCの画面に青色申告の文字

雑所得の有無に関係なく確定申告が必要なケースについて解説します。

個人事業主・フリーランス

個人事業主やフリーランスで、所得が48万円を超える場合は確定申告の必要があるかもしれません。48万円は所得税の基礎控除額です。たとえば、所得が100万円で他に控除する項目がなければ48万円を差し引いた52万円が課税される所得となり、所得税の確定申告と納税を行う必要があります。所得が48万円以下なら基礎控除により課税される所得が0円となるため、確定申告の必要はありません。

また、個人事業の開業届を出しており、青色申告承認申請書を複式簿記で出している場合、確定申告が必要です。55万円の青色申告特別控除を受けるには確定申告が必須となっています。

給与所得者で年収2,000万円以上

確定申告をしなければならないケースとして、前述の給与所得以外の所得が20万円を超えた場合以外に、給与(賞与含む)が2,000万円を超えた場合が規定されています。会社員は確定申告の必要がないと思い込んでいる方もいるようですが、給与と賞与で2,000万円を超えると確定申告が必要です。また、給与の額にかかわらず、2ヶ所以上から給与を受けている場合も確定申告が必要な場合として規定されています。

課税所得金額が694万9,000円以下なら確定申告する

所得税の文字と電卓を打つ手

ここまでは確定申告が必要なケースについて解説しましたが、ここでは課税所得金額によっては確定申告したほうがよい点について解説します。

不動産クラウドファンディングの分配金、利益は20.42%の源泉徴収をされたうえで支払われますが、本来支払うべき所得税額が源泉徴収税額より少ない場合は、払い過ぎた分の還付を受ける権利があり、還付申告としての確定申告を行います。

源泉徴収による払い過ぎを考慮したいのは、課税される所得金額が694万9,000円以下の場合です。この金額以下であれば所得税率は20%以下で、下に示す税額計算サンプルのように、基準所得税額で算出した復興特別所得税を加えても還付金が発生する可能性があります。

(所得税の税率)

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から329,9000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%63,6000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
※出典:国税庁タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

この税率は2037年まで適用されます。各段階で1,000円の空白がありますが、これは1,000未満を切り捨てとする規定があるためです。また、復興特別所得税が別途計算されます。復興特別所得税は、税額控除を適用した基準所得税額に対して2.1%です。

(税額計算サンプル)

収入が不動産クラウドファンディングの分配金のみで600万円、経費なしで所得控除は基礎控除の48万円のみ、税額控除なしの場合

・源泉徴収税額:6,000,000×0.2042=1,225,200円

・課税所得金額:6,000,000-480,000=5,520,000円

・所得税額(20%):5,520,000×0.2=1,104,000円

・基準所得税額:1,104,000円

・復興特別所得税:1,104,000×0.21=23,184円

・所得税と復興特別所得税の合計:1,104,000+23,184=1,127,184円

・源泉徴収税額との差額:1,225,200-1,127,184=98,016円

確定申告することで還付申告となり、98,016円が還付されます。
※源泉徴収税額と実際の所得税額が異なることを強調するための条件設定です。

確定申告のやり方

ノートPCの画面にe-TAX!の文字

確定申告が必要なケース、したほうがよいケースのために、確定申告のやり方を紹介します。

年間の収支その他のデータをそろえる

確定申告は年間(前年の1月1日~12月31日まで)の収入や経費、社会保険料、生命保険料など、お金の入りと出のデータを揃えるところから始めます。

添付書類を漏れなく用意する

確定申告をする際には、ケースによって必要な添付書類が異なります。何が必要なのかをしっかりと確認して、漏れのないように用意しましょう。以下は主な添付書類の例です。

・源泉徴収票

・支払調書

・本人確認書類の写し(マイナンバーカード両面、原本の提示でも可)

・保険料払込証明書

税額計算・確定申告書作成

収入から必要経費を差し引いた所得を算出し、各種所得控除を適用した結果の税額を計算します。計算ミスがないように注意しましょう。収入と所得、控除額や税額は確定申告書に正しく記入します。

確定申告書を自分で作成する方法には、手書きと会計・確定申告ソフトの利用、国税庁の確定申告書等作成コーナー(Web)の利用があります。手書きは計算から記入まで自分の手で行うことから、ミスが起きやすいためおすすめできません。会計・確定申告ソフトは便利ですが、利用料金がかかるものがあります。

確定申告等作成コーナーは無料で使えるだけでなく、基本的な入力をするだけで確定申告書や決算書を完成させてくれるスグレモノです。今回の入力内容をダウンロードしておけば、次回役に立ちます。

期間内に確定申告を行う

確定申告の期間は例年2月16日~3月15日です。開始日と最終日が休日に当たる場合はスライドします。新型コロナウイルス感染症拡大時のように、期間が延長されることがありますが、極めてレアなケースです。

還付申告は翌年1月1日から5年間可能となっています。ただし、確定申告期限内に申告しない場合は期限内申告が必要な55万円の青色申告特別控除などを受けられません。

窓口提出・郵送提出とe-TAX

確定申告は申告書を提出して行います。提出方法は、税務署の窓口提出(時間外は収受箱に投函)と郵送提出、e-TAXによる電子申告から選択可能です。近年ではe-TAXアプリの利用が推奨されています。

納税と還付の受け方

確定申告は納税とセットになっています。法定納期限は確定申告期限と同じ3月15日です。税務署や金融機関の窓口で納付書を使い現金納付する場合は、資金の準備も含めて余裕のある申告・納税をしましょう。振替納付の振替日は4月下旬(2024年は4月23日)です。

不動産クラウドファンディングと節税

相続税と書かれたキューブとペンと電卓

不動産クラウドファンディングに節税効果があるか否かは、契約する形態によって異なります。

匿名組合型は節税効果を見込めない

一般的な匿名組合型の不動産クラウドファンディングは、投資家自身が現物の不動産を扱うわけではないため、計上する経費がほとんどありません。したがって、節税とは無縁だといえるでしょう。

任意組合型の節税効果

任意組合型の不動産クラウドファンディングであれば、不動産投資と同様に投資家に不動産の所有権があるため、経費計上や相続税対策として現金を投資に使うことによる節税効果を期待できます。任意組合型による所得区分は不動産所得で、損益通算が可能です。

確定申告で不明な点は税務署か税理士に相談する

相談の看板と長机と椅子のミニチュア

確定申告は国民の義務である納税の手続きであり、不明点が曖昧なまま推測で確定申告をすることがないように注意が必要です。

税の過不足

確定申告が間違っていると税の過不足につながりかねません。税額を少なく計算していたり、還付額を多く計算していたりした場合には修正申告が必要です。修正申告が遅れると過少申告加算税がかかるケースがあります。

税務署や税理士に相談

収入と経費が明確で複雑ではない場合であれば、確定申告の作業で疑問点が生じることはないかもしれません。しかし、税制は複雑なものであり、情報や知識の不足でよくわからないというケースもあり得ます。不明点はそのままにしておかず、税務署か税理士に相談しましょう。また、自分で確定申告書の作成ができない場合には、税理士に依頼可能です。

不動産クラウドファンディングで利益を上げて確定申告しよう

不動産クラウドファンディングは投資であり、通常は分配金や売却益を得る目的で行われます。匿名組合型の契約であれば雑所得として、任意組合型の契約であれば不動産所得として、それぞれ確定申告の対象です。確定申告は難しそうだし面倒だと感じるかもしれません。しかし、利益が増えれば増えるほど確定申告が必須になります。不動産クラウドファンディングで利益を上げて、笑顔で確定申告しましょう。

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