気軽にインターネット上で少額からおこなえる投資手段として、不動産クラウドファンディングが注目を集めています。しかし特に投資の初心者にとっては、利点だけでなくデメリットもしっかり把握しておきたいものです。
本記事では、「人によってはデメリットとなるかもしれない点」まで含めて丁寧に解説していますので、不動産クラウドファンディングの正しい理解につながります。ぜひご参考ください。
不動産クラウドファンディング業界の動向や将来性を理解しておこう
デメリットについて確認するまえに、まずは不動産クラウドファンディングの将来性を踏まえておきましょう。業界全体の傾向を、要点に絞って以下にご紹介します。
2017年、2019年の法改正に伴い不動産クラウドファンディングが活発化
不動産クラウドファンディングは2014年現在、「不動産特定共同事業法」という法律のもと認可を受けた事業者だけが提供できるサービスとなっています。
不動産特定共同事業法はもともと、複数の投資家から資金を募って不動産を取引・運用する際の厳格なルールとして1995年4月に施行されましたが、特に近年2017年、2019年と法律案改正が重ねられたことによって、現代の「インターネット上の電子取引のみで投資取引が完結する」という仕組みを踏まえつつ、投資家の利益を正しく守れるよう、そして事業者側も小規模運営をおこないやすいよう、法整備が進んでいます。
こういった背景によって、現在では不動産クラウドファンディングへ参入する事業者数、サービスを利用する投資者の数、および業界規模が拡大傾向にあります。
不動産クラウドファンディングの件数や出資額は増加傾向に
国土交通省が公表している資料「不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングの件数・出資額の推移」(※1)によると、前述の不動産特定共同事業法に基づいた不動産クラウドファンディングの国内件数は、平成30年(2018年)には26件だったものが、令和4年(2022年)にはなんと419件もの数にまで増加しています。
また出資額の総計についても、平成30年はおよそ12億円だったものが、令和3年にはおよそ231億円、令和4年にはおよそ604億円と、近年の業界拡大が著しいものであることを充分に示す数値となっています。
※1 出典:国土交通省 報道資料「不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングの件数・出資額の推移」
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00129.html
「まちづくり」と「クラウドファンディング」の組み合わせによる事業が一般的に
同じく国土交通省では「クラウドファンディング活用型まちづくりファンド支援」の推進がおこなわれており、クラウドファンディングを活用したうえでの地域の景観形成や、住民によるまちづくりに関連する活動に対しての助成となる「まちづくりファンド」を設立しています。
併せて地方公共団体や民間事業者へのセミナーも開催するなど国が主導となった活発化がおこなわれており、今後も社会全体で不動産クラウドファンディングへの注目度が高まることが期待されています。
不動産クラウドファンディングについてさらに基本的なところから知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
不動産クラウドファンディングで「デメリット」となる可能性がある事項
それではここからは、注目を集め利用者も増えている「不動産クラウドファンディング」について、デメリットにはどのようなことが考えられるかを見ていきましょう。
多額のリターンを求めると難易度が高い
不動産クラウドファンディングが多くの投資家、特に投資を始めたての初心者から人気を集めている理由のひとつとして、「リスクが少なく、比較的安定して利益を得ることが可能」という点があります。
この点は、半面としては「ハイリスク・ハイリターンというものは狙いにくい」という面もあります。
但し、常に複数のファンドを公開していて様々なタイプの案件を提供している事業者の場合は、より大きなリターンを狙いやすい大規模・長期運用の任意組合方式の商品がラインナップされていることもあります。
そのため、ある程度慣れてきて不動産クラウドファンディングの運用性質などの知識が深まってきた際には、多額のリターンを求めることも可能とはなっています。
人気の高い案件はすぐに埋まってしまう
不動産クラウドファンディングは一度利用登録手続きさえ済ませてしまえば、案件の閲覧・および出資をサイト上の簡潔な操作のみでおこなえます。
そのため、特に利回り(期待できる利益の度合い)が高い案件や、リスクの発生確率が低い案件などは手慣れた投資家のクリック合戦によってあっという間に満額まで投資が埋まってしまう、ということがよくあります。
途中解約はできない可能性がある
こちらは事業者や案件にもよりますが、基本的には、不動産クラウドファンディングでは投資後(案件運用開始後)の途中解約はできないことが一般的です。
そのため、例えば株式取引のような「相場状況を常に監視し、もっとも利益が大きくなると思われたタイミングで売却(現金化し利益を確定)」といったような投資の仕方はできません。
不動産クラウドファンディングは案件ごとに予め定められた運用期間を終えたのち、その時点で運営成績に応じた分配金が算出され、投資者それぞれへ分配されることになります。
元本保証はない
株式・金融商品など他の投資手段と同様に、不動産クラウドファンディングの投資において元本保証(最初に出資した金額だけはどんなことがあっても返ってくるという保証)はありません。
実際的には、不動産クラウドファンディングにおいて元本が返ってこないほどの運用失敗というのはあまり事例としてはありませんが、少なくとも保証はないものであるということは覚えておきましょう。
ひとつひとつの案件は、運用期間が短め
特に少額投資から参加できる案件については、運用期間が1か月~数か月など短めに設定されていることがほとんどです。そういった案件は、じっくり長期投資したい、あまり細かなスパンでは案件のチェックや新規投資の検討などをしたくない、という人にとっては向いていない面もあるでしょう。
ただし、不動産クラウドファンディングにも大規模かつ長期運用の案件がまったくないわけではありません。
また、特に投資初心者にとっては、短い期間で成果が確定する短期案件のほうが挑戦しやすいという面もあります。
自己資金で全額をまかなう必要がある
例えば事業者経由ではなく自分自身で不動産を購入し、賃貸に出して入居者から収益を得たり事業利益を出したりする現物不動産投資においては、もし「高い利益を見込めるこの物件を購入したいが資金が足りない」という場合には融資などを受けて投資額にレバレッジをかけることも可能です。
しかし不動産クラウドファンディングは、自己資金の範囲でしか投資をおこなえません。
税制上の優遇措置はない
一般的な不動産クラウドファンディングでは、自身で不動産を購入する場合と違ってあくまで事業者への投資となるため、税制上の優遇措置はありません。利益分の税金をそのまま納める必要があります。
ただし、「任意組合型」という複数の投資家で組合を締結したうえで不動産を購入・管理・運用するタイプの出資方式では、配当金が不動産所得となるため、不動産クラウドファンディングであっても節税対策が可能です。
不動産クラウドファンディングにおける節税については、こちらの記事で詳しく解説しています。
提供事業者が多いため、事業者選び&商品選びに時間がかかる
冒頭で述べたように、不動産クラウドファンディング業界自体が拡大傾向にあり、新規参入事業者も増えています。
いざ初心者が始めてみようと思い立っても、インターネット上でたくさんの提供事業者が見つかるため、どの事業者を選ぶべきか、どの商品へ投資すべきかと迷ってしまうかもしれません。
不動産クラウドファンディングのデメリットを回避・軽減するために
前項でご紹介した、様々な「デメリットとなる可能性があること」をなるべく回避・軽減しつつ、間違いのない不動産クラウドファンディングへの投資をおこなうために大切となるポイントを解説します。
適切な情報開示がなされた案件を選ぶ
不動産クラウドファンディングへ投資を行う場合、投資者は、事業者がWebサイト上で公開している案件(ファンド)ごとの詳細情報を確認したうえで、投資先を検討することとなります。
ただ、このサイト上での公開情報については、実は厳密な開示項目の決まりなどはなく、事業者や不動産についての情報の開示範囲が決まっているわけでもありません。
そのため、投資を検討する際に参照できる情報の量・質については事業者によってまちまちとなっているのが現状です。
特に、投資初心者が不動産クラウドファンディングを始める際には、なるべく予定分配率や運用期間のほか不動産そのものの外観写真・内観写真、想定収支スキームや可能性のある運用リスクなど、なるべく事細かな情報を開示してくれている事業者・および案件を選ぶことをおすすめします。
優先劣後出資制度の割合を確認しておく
「優先劣後出資制度」とは、出資者が原本を取り戻せないほど損をしてしまう、いわゆる「元本割れ」が起きるリスクを極力低減するための仕組みです。
具体的には、以下のような制度となります。
・案件に投資家だけでなく事業者も出資を行い、投資家側は「優先出資者」という扱い、事業者側は「劣後出資者」という扱いになる
・ファンドの運用後にもし損失が出てしまった場合には、劣後出資者である事業者側の出資金から、まずは損失をすべて充当するように図る。事業者側の充当だけでは足らないという状況であった場合には、投資家側の出資金も損失の充当にあてる
「優先劣後出資制度」を採用している案件を取り扱っている事業者の場合には、この仕組みによっては、投資家側が損する可能性を極力低くしています。
ただし、
こういった仕組みのため、少なくともこの制度が採用されていないファンドと比較すると、多少の運用損失があった場合でも出資者側に「原本プラスアルファ」の償還がなされる可能性が高く、原本割れしてしまう可能性は低いといえます。
出資金総額に対して事業者と投資家の割合が何対何になるか、という「優先劣後出資制度の割合」については事業者や商品によって様々です。
「元本割れ」となるリスクの低減を最優先とした場合には、この割合についても事前に確認しておきましょう。
あくまで余裕資金で運用する
どの投資手段にもいえることではありますが、投資はあくまで自分の収入でまかなえる範囲、自己がもつ余裕資金でおこない、万が一運用失敗などがあっても致命的な経済的損失を受けなくて済む範囲にとどめておきましょう。
投資を分散する
前項の余裕資金で運用するという点に加え、その資金をすべてひとつの案件に投資してしまうのではなく、「いくつかの案件に分散して投資する」というのも、リスク回避の面で大変有効です。
実績の多い、安定した運用を行っている事業者を選ぶ
不動産クラウドファンディングでは、基本的に不動産の運用が事業者によっておこなわれます。どの程度の利益が期待できるか、また失敗するリスクはどの程度あるかといったこともすべては事業者のノウハウ・スキルにかかってくるため、不動産クラウドファンディングの運用実績が長く、多くある事業者を選びましょう。
公開されている案件ごとの運用後の成果を見て、運用の安定度を見計らうことも重要です。
案件数が常に多い事業者を選ぶ
前述のように、投資手順が簡単な不動産クラウドファンディングにおいては、人気の高い案件はすぐに埋まってしまう傾向にあります。
少ない案件のなかで、余った案件からしぶしぶ投資先を選択しているようでは、特に投資初心者にとっては本末転倒の結果となってしまいかねません。
常に一定数以上の案件が並行して運用されている事業者を選びましょう。
不動産クラウドファンディングで得られる「メリット」
本記事では主に「デメリット」に注目して不動産クラウドファンディングの特徴をご紹介していますが、もちろんのこと、メリットも多い投資手段であることは言うまでもありません。
ここではごく簡単に、不動産クラウドファンディングの代表的なメリットもご紹介しておきましょう。
少額の投資で気軽に始められる
もし、自分で不動産を直接購入して不動産投資をおこなう場合には、初期投資に加えて運用期間中の清掃・メンテナンスなど多大な費用が必要となります。
しかし複数の投資家で小口投資することとなる不動産クラウドファンディングでは、案件にもよりますが最低1万円から、ととても少額からの不動産投資が可能です。
商業施設・ホテルなどに本来個人投資しにくい不動産にも投資できる
賃貸マンションやアパートなどの家賃収入タイプだけでなく、商業施設やホテルなど、規模も収益モデルも様々な、複数の投資案件が提供されている場合もあります。
投資後は、基本的には結果を待つだけ
投資家自身が不動産所有者となる「任意組合方式」の場合は別ですが、多くの案件で適用されている「匿名組合方式」であれば、投資家は一度投資をしたあとは、運用期間満了まで「ただ結果を待つ」だけとなります。普段忙しい方のサブワーク、趣味の範囲での投資方法としても適しています。
金融商品と比較して市況に影響されにくい
例えば不動産業界自体が深刻な不況を迎え不動産価値が下落するといった事態が起きた場合は別として、基本的に不動産業はその地域に「ひと」がいるかぎり安定している市場です。
株式や金融商品への投資と比較して、利回りの安定が見込めます。
投資が社会貢献にもつながる
記事の冒頭でお伝えしたように、不動産クラウドファンディングは街づくり事業にも活かされています。投資家にとっても、投資が自身の損得のみならず、地域創生、再生可能エネルギーなどの環境への貢献につながり充実感を得られる可能性があります。
どのような人が不動産クラウドファンディングに向いている?
本記事でご紹介した様々な特徴を持つ不動産クラウドファンディングは、総合して考えると主に、以下のような方に特に向いている投資手段であるといえます。ぜひ参考になさってください。
- 少額から試してみたい投資初心者
- 投資に手間をかける時間的余裕が少ない人
- ある程度の利益を得つつ、社会貢献にも携わりたい人
あなぶき興産の「Jointo α(ジョイントアルファ)」なら常に複数の安定したファンド商品を運用
不動産開発の長年の実績をもつ、穴吹興産株式会社が運用する不動産クラウドファンディングが「Jointo α(ジョイントアルファ)」です。
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初心者が取りかかりやすい、安定した不動産クラウドファンディングをお探しの場合は、ぜひご検討ください。
デメリットも正しく理解して、不動産クラウドファンディングを上手に活用
不動産クラウドファンディングは、他の様々な投資手段と同じようにデメリットも検討しつつ利用すべきサービスです。
ただし、本記事でご紹介したように、デメリットとして考えられる多くの点には、対策があったり、また人によってはそもそもデメリットではなかったりという部分が含まれています。
初心者がチャレンジしやすい安定した投資手段として注目を集めている不動産クラウドファンディングについて、ぜひこの機会に理解を深めてみてください。