不動産投資で安定収益を得るには、リスク分散が不可欠です。
本記事では、物件タイプ・地域・価格帯など、多角的な分散方法とその実践ポイントをわかりやすく解説します。
物件タイプ別の収益性とリスク
5つの具体的な分散投資方法
不動産投資で分散投資するメリット
不動産投資で分散が重要な理由

分散投資が必要な理由①リスクの軽減
不動産投資において分散投資が必要な理由は、単一の物件に集中投資することで生じるリスクを軽減できるためです。1つの物件だけに投資している場合、その物件に何かトラブルが発生すると、収益全体に大きな影響を及ぼします。
例えば、入居者が退去して空室になった場合、その期間は家賃収入がゼロになります。単一物件への投資では、この空室リスクを分散できません。
さらに、物件が立地する地域の経済状況が悪化したり、自然災害に見舞われたりすれば、物件価値の下落や修繕費用の発生といったリスクも集中してしまいます。
分散投資が必要な理由②流動性の低さ
不動産投資には流動性が低いという特徴があります。株式のようにすぐに売却できないため、一度購入した物件でトラブルが起きても、素早く対応することが困難です。
だからこそ、購入段階から複数の物件に分散してリスクヘッジしておくことが重要になります。
分散投資を行うことで、1つの物件で損失が出ても、ほかの物件の収益でカバーできる可能性が高まります。結果として、ポートフォリオ全体の収益を安定させ、長期的な資産形成を実現しやすくなるのです。
物件タイプ別の収益性とリスク

不動産投資では、物件タイプによって収益性とリスクの特性が大きく異なります。それぞれの特徴を理解した上で、自身の投資目的や資金力に合わせて組み合わせることが、効果的な分散投資につながります。
ここでは、代表的な3つの物件タイプについて、収益性とリスクの観点から詳しく解説します。
区分マンション
区分マンションは、マンションの一室を購入して賃貸に出す投資方法です。比較的少額の資金から始められるため、不動産投資の入門として選ばれることが多い物件タイプといえます。
一棟マンション・アパート
一棟マンションやアパートは、建物全体を所有して複数の部屋を賃貸に出す投資方法です。大きな資金が必要になりますが、その分スケールメリットを生かした運用が可能になります。
戸建て
戸建て投資は、一戸建て住宅を購入して賃貸に出す方法です。主にファミリー層をターゲットとしており、長期安定運用に適した物件タイプといえます。
不動産投資の分散方法5選

不動産投資における分散投資は、複数の観点から行う必要があります。1つの軸だけでなく、複数の軸を組み合わせて分散させることで、より強固なポートフォリオを構築できます。
立地・地域の分散
立地や地域を分散させることは、不動産投資において重要な分散方法の1つです。特定の地域に物件を集中させると、その地域特有のリスクをすべて受けることになります。

例えば、東京23区内だけに複数の物件を持っている場合…
首都直下地震などの大規模災害が発生すると、すべての物件が同時に被害を受ける可能性があります。
また、地域経済の衰退や人口減少によって、エリア全体の賃貸需要が低下するリスクもあります。
効果的な地域分散としては、大都市圏と地方中核都市を組み合わせる方法があります。都市圏に加えて、地方中核都市にも投資することで、地域リスクを分散できます。
地方中核都市は物件価格が安く、利回りが高い傾向があるため、収益性の向上にもつながります。
運用期間の分散
運用期間を分散させることで、キャッシュフローと出口戦略の柔軟性を高めることができます。すべての物件を同じタイミングで購入・売却するのではなく、時期をずらすことでリスクを軽減できます。
【短期運用と長期運用を組み合わせる】
短期運用物件は3年から5年程度で売却を検討し、市場が好調なタイミングで売却益を狙います。
一方、長期運用物件は10年以上保有することを前提に、安定したインカムゲイン(家賃収入)を重視します。
【購入時期をずらす】
不動産市場は景気サイクルの影響を受けるため、好況期と不況期では物件価格が大きく変動します。一度にすべての資金を投入するのではなく、数年かけて段階的に物件を増やしていくことで、購入時期の分散が可能です。
物件用途の分散
物件の用途を分散させることで、景気変動や社会情勢の変化に対応しやすいポートフォリオを構築できます。住居用物件だけでなく、事業用物件も組み合わせることで、異なる賃貸需要を取り込めます。
【住居用物件の場合】
ワンルームマンションやファミリー向けマンション、戸建てなど、ターゲット層を分散させることが重要です。単身者向けと家族向けでは、景気の影響の受け方が異なります。単身者向けは転勤や就職などで需要が発生しやすい一方、家族向けは長期入居が見込めます。
【事業用物件の場合】
店舗・オフィス・駐車場などがあります。店舗物件は住居用と比べて賃料が高く設定できる反面、景気の影響を受けやすい特徴があります。
価格帯の分散
物件の価格帯を分散させることは、投資リスクと流動性のバランスを取る上で重要です。高額物件と低額物件では、リスクとリターンの特性が大きく異なります。
【低価格帯の物件(1,000万円未満)】
低価格帯の物件は利回りを高く設定できる傾向があります。複数物件を購入しやすいため、物理的な分散投資を実現しやすい点も魅力です。
ただし、築年数が古い物件が多く、修繕費用がかさむリスクや入居者の質に課題がある場合もあります。
【中価格帯の物件(1,000万円から3,000万円程度)】
中価格帯の物件は、バランスの取れた投資対象といえます。ある程度の利回りを確保しつつ、物件の質も保たれているため、安定した運用が期待できるでしょう。
構造・間取りの分散
建物の構造や間取りを分散させることで、異なる入居者層のニーズに対応でき、空室リスクを軽減できます。構造によって耐久性や維持コストが異なるため、この点も考慮した分散が重要です。
【建物構造の分散】
鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造、木造を組み合わせる方法があります。
RC造
耐久性が高く、法定耐用年数が47年と長いため、長期的な資産形成に適しています。
木造
建築コストが安く、利回りを高く設定しやすい点が特徴です。法定耐用年数は22年と短いですが、適切なメンテナンスを行えば長期運用も可能です。地方中核都市のアパート投資では、木造が主流となっています。
鉄骨造
RC造と木造の中間的な特性を持ちます。法定耐用年数は34年(重量鉄骨の場合)で、コストパフォーマンスに優れています。
【間取りの分散】
ワンルーム、1LDK、2LDK、3LDK以上といった異なる間取りを持つことで、単身者・夫婦・ファミリーと幅広い入居者層をカバーできます。
不動産投資で分散投資をする4つのメリット


不動産投資において分散投資を行うことには、リスク軽減だけでなく、収益の安定化や資産価値の向上といった多くのメリットがあります。ここでは、具体的な3つのメリットについて詳しく解説します。
空室リスクを抑えられる
分散投資を実践するメリットは、空室リスクを軽減できる点です。単一物件への集中投資では、空室が発生すると収入が途絶えてしまいます。
しかし、複数物件を保有していれば、一部が空室になってもほかの物件からの収入でカバーできます。
退去時の原状回復費用についても、複数物件があれば一度に大きな出費が発生するリスクを避けられるでしょう。
収益変動リスクを抑えられる
分散投資をすると家賃収入の変動リスクも抑えられます。投資期間中は、景気の変動や地域の賃貸相場の変化によって、家賃を下げざるを得ない状況が生じることがあります。
複数の地域や物件タイプに分散していれば、一部の物件で家賃が下落しても、ほかの物件でカバーできる可能性が高まるでしょう。
災害や地域経済の変動など特定エリアが受ける影響を軽減できる
地域分散によって、自然災害や地域経済の変動といった地域特有のリスクを軽減できます。日本は地震・台風・水害などの自然災害が多い国であり、特定の地域に物件を集中させることは大きなリスクです。
複数のエリアに分散投資していれば、1つの地域が被災しても、ほかの地域の物件は無傷で済み、収益を維持できます。
地域経済の変動リスクも見逃せません。大企業の工場閉鎖や撤退、産業構造の変化などによって、特定地域の経済が衰退することがあります。



例えば、製造業に依存する地方中核都市では、主要工場の閉鎖によって人口流出が起こり、賃貸需要が急減するケースがあります。
複数の地域に分散投資していれば、1つの地域が衰退してもほかの地域でカバーすることが可能です。成長性の高い地域と安定した地域を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のバランスを保てます。
景気に左右されにくいポートフォリオを作れる
物件タイプや用途を分散させることで、景気変動に強いポートフォリオが作れます。
景気拡大期はオフィスや商業施設が好調ですが、不況期には住居系が比較的安定するため、複数の用途を組み合わせることでリスクを平準化できます。
少額からできる不動産分散投資の始め方
(REIT・不動産クラウドファンディング)


不動産投資の分散が重要だと分かっていても、実物不動産を複数購入するには多額の資金が必要です。しかし、少額から始められる金融商品を活用すれば、限られた資金でも分散投資を実現できます。
ここでは、手軽に不動産分散投資ができる2つの手法について解説します。
REIT(不動産投資信託)


REIT(不動産投資信託)は、投資家から集めた資金で複数の不動産を購入し、その賃貸収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。日本では「J-REIT」として東京証券取引所に上場しており、数万円から投資できます。
魅力①安定した分配金収入が期待できる(高い利回り)
利益の90%以上を分配する仕組みにより、実物不動産に近い安定した収益が得られ、高い利回りが期待できます。
魅力②数万円から投資でき、複数タイプへ分散投資が可能
オフィス、住宅、商業施設、物流、ホテルなど、さまざまなREITを組み合わせることで、用途・地域の分散投資が簡単に実現できます。
魅力➂プロが物件を選定・管理するため手間がかからない
物件管理や入居者対応などの手間がなく、専門家に任せながら不動産投資のメリットを享受できます。


不動産クラウドファンディング


不動産クラウドファンディングは、従来の不動産投資の課題を解決する新しい投資手法として、近年大きく成長しています。
ここでは、不動産クラウドファンディングの具体的な特徴とメリットを詳しく解説します。
魅力①1万円程度から始められる
不動産クラウドファンディングの魅力は、1万円という少額から不動産投資を始められる点です。実物不動産投資では、区分マンションでも最低数百万円、一棟物件なら数千万円から億単位の資金が必要になります。
これに対して、不動産クラウドファンディングなら、まとまった資金がない方でも気軽に始められます。
魅力②優先劣後構造で投資家が保護されている
不動産クラウドファンディングの多くで採用されている優先劣後構造は、投資家の元本を守る重要な仕組みです。この構造により、一定範囲内であれば物件価値が下落しても投資家の元本が保護されます。
実物不動産投資では、物件価値の下落リスクをすべて投資家が負いますが、優先劣後構造があることで、リスクの一部を運営会社が肩代わりしてくれるのです。
魅力➂運用期間が選べる
不動産クラウドファンディングでは、案件ごとに運用期間が設定されており、自分のライフプランや投資戦略に合わせて選択できます。この柔軟性は、長期間資金が拘束される実物不動産投資にはないメリットです。
運用期間は案件によってさまざまですが、一般的に3カ月から2年程度の範囲で設定されています。短期案件は6カ月以内、中期案件は6カ月から1年、長期案件は1年以上といった分類ができます。
魅力④案件の選択肢が多い
不動産クラウドファンディングでは、物件タイプ・立地・利回り・運用期間など、多様な選択肢の中から自分の投資方針に合った案件を選べる環境が整っています。
住居用では、都心部のワンルームマンション・ファミリー向けマンション・戸建て・シェアハウスなどさまざまなタイプがあります。
地域の選択肢も豊富です。東京23区の人気エリアや地方中核都市、地方の物件にも投資できます。


まとめ


不動産投資における分散投資は、リスクを抑えながら安定した収益を実現するための重要な戦略です。単一の物件に集中投資することで生じる空室リスクや災害リスク、地域経済の変動リスクなどを、複数の物件や地域に分散することで軽減できます。
立地や地域の分散によって災害や地域経済の影響を抑え、運用期間の分散によってキャッシュフローを安定させることが可能です。初めて不動産を始める方に適した選択肢の1つであるため、ぜひ知っておきましょう。
よくある質問




穴吹興産株式会社 不動産ソリューション事業部
アセットマネジメントグループ課長 穴吹 章彦
【資格】
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
【経歴】
ソリューション事業部の業務に7年従事し、投資用不動産のアセットマネジメント業務を経験。現在は不動産特定共同事業におけるファンドの組成業務に従事し、投資家との契約業務全般を担当。不動産クラウドファンディングの仕組みや専門用語を解説しながら、情報発信を行っている。








