不動産クラウドファンディングで「節税」はできる?「組合型」の違いを詳しく解説

不動産投資や金融投資は、資産運用や老後資金の確保といった目的だけでなく節税手段としての利用も活発になってきています。

特に近年拡大傾向にある投資手段「不動産クラウドファンディング」では、他の投資手段と同じように節税は可能かどうか気になる方も多いかもしれません。

今回の記事では、不動産クラウドファンディングの分配金の税法上の取り扱いや、不動産クラウドファンディングで節税ができる場合、節税対策時の注意点について解説します。節税目的で不動産クラウドファンディングを検討している際には、ぜひ参考にしてください。

目次

不動産クラウドファンディングの分配金は税法上、「雑所得」か「不動産所得」にあたる

虫メガネとお金

不動産クラウドファンディングでは、不動産運用によって得られた利益が分配金として、最終的に投資家へ分配されます。分配金を得た場合は確定申告が必要です。確定申告時、分配金が税法上のどの所得に該当するかによって、節税になるかならないかが異なってきます

税法上の具体的な所得の種類に加えて、不動産クラウドファンディングの分配金の取り扱いについて解説します。

税法上の所得の種類

税法上の所得とは、収入から必要経費を差し引いて出た「儲け」のことです。税法上では、所得を得た手段や経緯により、以下の10種類の所得を設けています。

・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得

この内、雑所得とはほかの9種類の所得いずれにも該当しないものを指します。いずれの所得にも原則として所得税が課税され、税金の算出方法は所得の種類によって異なります。

不動産クラウドファンディングでは分配金の源泉徴収が基本的に事業者側でおこなわれる

不動産クラウドファンディングでは、基本的に分配金の分配時に不動産クラウドファンディング事業者側で源泉徴収をおこなっています。そのため、分配時に納税手続きは必要ありません。ただし例外もあるため、源泉徴収手続きについては利用規約などで確認しておくことをおすすめします。

不動産クラウドファンディングにおける分配金の源泉徴収税率は、20.42%です。

「匿名組合型」であれば「雑所得」、「任意組合型」であれば「不動産所得」

不動産クラウドファンディングで得た分配金の税制上の区分は、出資方法によって異なります。出資方法が匿名組合型の場合は雑所得、任意組合型なら不動産所得です。

不動産クラウドファンディングには、「匿名組合方式」型と「任意組合方式」型の2種類の出資方法があります。出資方法によって不動産物件の取り扱いや投資家の責任範囲などが異なります。

■匿名組合型とは?
不動産運用において投資家と不動産クラウドファンディング事業者が匿名組合契約を結ぶ出資方式です。投資家は現物の不動産運用に関与せず、投資した物件も所有しないのが特徴です。クラウドファンディング事業者が運用するプロジェクトに対して投資を行い、利益が出れば見返りとして収益が分配金として分配されます。不動産を投資家が所有しないことから、匿名組合型で得た分配金は、雑所得に該当します。

■任意組合型とは?
任意組合契約を複数の投資家間で締結して不動産運用を行う出資方式です。運用する不動産は、投資家と不動産クラウドファンディング事業者とで共同で所有し、運用します。運用によって得られた利益が分配金として分配されますが、所有している不動産を運用した上で得た利益に該当するため、分配金の税法上の所得の種類は不動産所得です。

不動産クラウドファンディングの分配金は、匿名組合型の場合は雑所得、任意組合型では不動産所得として確定申告が必要です。ただし年間雑所得が20万円以下の場合は確定申告は不要となります。

不動産クラウドファンディングで節税はできる?

ビルが並ぶ街

不動産クラウドファンディングで得られた分配金は、節税対策できるかどうかについて解説します。

従来の不動産投資と同様の節税は「できない」

従来の不動産投資と不動産クラウドファンディングの分配金を比較すると、不動産投資と同様の節税効果は期待できないことを覚えておきましょう。従来型の不動産投資では、投資家が不動産そのものを丸ごと所有します。そのため不動産の物件管理のために発生した費用は、経費として計上できました。たとえば不動産投資目的でマンションを所有していた場合、現状回復のための清掃代や設備のメンテナンス費用などが発生します。これらの費用は経費として計上できるため、マンションの投資で得た利益(収入)から経費を差し引くことで、節税効果を得た上での所得申告ができます。

ところが不動産クラウドファンディングは、不動産クラウドファンディング事業者が小口化した権利の一部に投資する形となります。不動産クラウドファンディング事業者が小口化した権利の一部に投資する形となります。さらに匿名組合型ではない投資家として物件を所有しません。物件の管理や運用に関する費用が発生しないため、収入から経費として差し引くことができないことになります。不動産クラウドファンディングでは、贈与税や相続税の面でも従来の不動産投資と同様の節税効果は得られないと言えるでしょう。

「任意組合型」の不動産クラウドファンディングの場合は節税効果を得られる

従来の不動産投資と同等の節税効果は期待できないものの、任意組合型の不動産クラウドファンディングでは節税効果を得られます。任意組合型では、複数の投資家と不動産クラウドファンディング事業者が任意組合契約を結んで出資し、不動産を共同で所有するためです。

所有している不動産の運用自体は一部の投資家および不動産クラウドファンディング事業者が行うため、自分が運用に関わらない場合には運用に関する経費は発生しません。ただし、不動産に修繕や復旧が必要となれば、自分も不動産の所有者に該当するため、清掃費やメンテナンス費用を負担する場合があります。これらの費用は不動産管理に関する経費として収入から差し引くことができるため、従来の不動産投資よりも額は少なくなるものの、節税効果が期待できます。

「匿名組合型」の不動産クラウドファンディングの場合は状況によりけり

匿名組合型の不動産クラウドファンディングは、任意組合型のように分配金へ経費として計上できる費用が発生しません。ただし不動産クラウドファンディングで利益を得るために必要なもの、と認められれば経費として計上できる可能性があります。たとえば不動産クラウドファンディングについて予め勉強するために購入した書籍の費用やセミナーへの参加費、インターネット通信料などです。

また、雑所得を損益通算して節税効果を得る方法もあります。損益通算とは、同一年分の利益と損失を合算し、相殺することです。不動産クラウドファンディングで損失が出た場合、利益から損失を差し引くことで節税効果が期待できます。

雑所得とほかの9種類の所得同士の損益通算はできません。ただし、雑所得同士の損益通算は可能です。たとえば不動産クラウドファンディングと、仮想通貨取引それぞれで雑所得があり、利益と損失が発生した場合損益通算ができます。

「任意組合型」不動産クラウドファンディングでの節税

握手する人々

任意組合型の不動産クラウドファンディングで得た分配金は、不動産所得に該当し節税効果が期待できます。任意組合型の不動産クラウドファンディングでの具体的な節税方法について解説します。

減価償却費を計上する

任意組合型の不動産クラウドファンディングの分配金は、減価償却費を計上できます。減価償却とは、一般的に経年によって価値が減る資産(減価償却資産)は取得した時にすべて必要経費にするのではなく、資産の使用可能期間の全期間にわたって必要経費を分割して計上する制度のことです。たとえば車や業務用機器、建物などが減価償却資産に該当します。

減価償却は、経費が発生していない年でも減価償却資産があれば経費を一定期間継続して計上でき、所得税の還付が受けられます。ただし、不動産の中でも時の経過によって価値が減少しない土地は減価償却資産としてみなされないため、注意が必要です。

青色申告特別控除を利用する

確定申告は以下のように、申告方法および記帳方法によって控除金額が異なります。

・白色申告…10万円

・青色申告、紙での申告…55万円

・青色申告、電子申告…65万円

任意組合契約の分配金の確定申告を、青色申告かつ電子申告で行うことで、青色申告特別控除が適用となります。白色申告と比較すると、55万円分多く控除が受けられます。

ただし、青色申告特別控除を受けるためには課税年度の3月15日までに青色申告承認申請書を税務署に提出する、記帳を複式帳簿で行うなどの条件を満たす必要があります。

「任意組合型」不動産クラウドファンディングの注意点

「ポイント」と書かれた付箋

任意組合型の不動産クラウドファンディングは匿名組合型と比較すると、高い節税が期待できるファンド商品です。ただし、任意組合型の不動産クラウドファンディングにはデメリットもあります。節税効果のみだけでなくリスクの面でも覚えておきたい、任意組合型の不動産クラウドファンディングの注意点について紹介します。

物件運用で損失が出た場合、出資の割合に応じた「無限責任」を負う

任意組合型の不動産クラウドファンディングでは、不動産クラウドファンディング事業者と投資家が共同で物件を所有し、運用します。そのため、物件の運用で損失が出た場合の責任範囲が無限です。無限責任とは、損失が出た場合投資家が出資の割合に応じて負う損失に、限りがないことを指します。つまり、自分が出資した金額以上の債務を負うリスクがあるのです。

匿名組合型の不動産クラウドファンディングでは、投資家は物件を所有しないため損失が出た場合の責任範囲は有限です。たとえ損失が出ても、自分が出資した金額以上の債務を負うことはありません。

万が一損失が出た場合の責任の範囲も考えて、任意組合型か匿名組合型を選ぶことをおすすめします。

最低出資金額が大きめとなる

匿名組合型は最低出資額も1万円~と少額であるのに対して、任意組合型は最低出資額が100万円~と大きめです。出資額が大きいほど大きなリターンが期待できる一方、損失するリスクも大きくなる、出資のための資金調達が必要といったデメリットがあります。

節税面だけでなく、最低出資額の面でのリスクも考慮し、投資するプロジェクトを選ぶことが重要です。

不動産クラウドファンディングは「任意組合型」「匿名組合型」の違いを理解したうえで節税を検討しよう

不動産クラウドファンディングの分配金の税制上での分類や、任意組合型、匿名組合型それぞれでの節税対策方法について解説しました。特に任意組合型は不動産を所有するため、相続税や贈与税対策のうえでも節税効果が期待できます。ただし、任意組合型のクラウドファンディングには、メリットもデメリットもあります。節税面だけを見るのではなく、資金やリスク、リターン、運用方法などをふまえたうえで不動産クラウドファンディングを始めましょう。


初めて不動産クラウドファンディングを検討しているときには、穴吹興産株式会社が運営する不動産特定共同事業特化型クラウドファンディング「ジョイントアルファ」をぜひご確認ください。幅広い不動産クラウドファンディングのプロジェクトを取り扱っております。

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