不動産クラウドファンディングには、「匿名組合型」と「任意組合型」の2種類の出資方法があります。今回は、「匿名組合型」「任意組合型」の仕組みやメリット・デメリット、2つの出資方法の違いについて詳しく解説していきます。
匿名組合型とは?
「匿名組合型」とは、投資家と事業者が個々に匿名組合契約を結び、出資を受けた事業者が主体となり事業を運営する仕組みです。不動産の所有権は事業者になります。そのため、投資家である出資者が物件の名義人になることはありません。
「匿名組合型」のメリット
手間いらずで簡単!
不動産の所有者は事業者となるため、投資家は一度投資をしたあとは、運用期間満了までただ配当を待つだけです。物件の運用もプロである事業主がおこなうため、安定した収益を得ることが期待できます。 また、匿名組合型は分配金が源泉徴収されるため、雑所得の合計が20万円以下の場合は納税や確定申告の手間がかかりません。そのため、不動産投資の初心者の方にもお勧めできます。
優先劣後方式がある
不動産クラウドファンディングは元本保証がない投資形態であり、元本割れを完全に回避することはできません。優先劣後方式が導入されているファンドでは、万が一損失が発生した場合も劣後出資の範囲内であれば、優先出資元本は毀損しないスキームとなっています。優先劣後方式が導入されているファンドでは、元本毀損リスクが軽減されています。
有限責任
投資家の責任範囲は、出資額が限度となります。もし元本割れが起こり、投資家が債務を背負うことになったとしても、出資額以上となることはありません。無限責任である「任意組合型」に比べると、投資家のリスクは低いといえるでしょう。
少額・短期運用が可能
匿名組合型のファンドは、最低出資額が1~10万円と少額かつ投資期間が1か月~と短期間で投資できる商品が多くあります。そのため、リスクを負う期間が短く、投資初心者の方でも始めやすくなっています。
「匿名組合型」のデメリット
一度投資をすると、運用終了まで中途解約できないケースがほとんどです。運用期間は短期のものが多いですが、運用中は資産が制限されてしまいます。
一般的な匿名組合型の不動産クラウドファンディングは、投資家自身が現物の不動産を扱うわけではないため、計上する経費がほとんどありません。そのため、節税効果は見込めません。
・少額で数多くの投資を行いたい方
・短期の運用が好きな方
・試しにチャレンジしてみたい方
任意組合型とは?
「任意組合型」とは、複数の投資家の間で任意組合契約を結んで出資を行う方式です。つまり、不動産クラウドファンディングの事業者と複数の投資家が共同で不動産を所有・運営することになります。そこで得られた利益が組合契約者(組合員)へ分配されるという仕組みです。
「任意組合型」のメリット
節税効果が期待できる
任意組合型では、投資家は不動産物件の共同所有者のうちの一人となります。そのため不動産の物件管理のために発生した費用(清掃代や設備のメンテナンス等)は、経費として計上できます。投資で得た利益(収入)から経費を差し引くことで、節税効果を得た上での所得申告ができるのです。
大きなリターン
投資家も不動産の所有者となる任意組合型では、物件の運用期間が長期になることがほとんどで、出資額も高額になる傾向にあります。そのため、匿名組合型よりも大きなリターンが期待できるでしょう。
「任意組合型」のデメリット
無限責任
任意組合型のデメリットは、投資家の責任範囲が無限責任であることです。無限責任とは、債務に対する支払い義務が無制限であることを指します。
所有する物件になんらかの欠陥があったり、自然災害の影響を受けたりと、多額の修繕費や復旧費がかかってしまった場合には、各投資家が出資額以上の負担を負う場合があります。
運用期間が長期になる
前述のメリットでも記載いたしましたが、匿名組合型と比較すると運用期間が長期(3年~5年程度)となることが多く、その間資金用途が制限されることになります。中途解約ができないケースが多く、解約ができる場合でも現金化までに時間を要する可能性があります。
・長期で運用を行いたい方
・将来の賃貸経営に向けて勉強したい方
・相続税対策として検討したい方
匿名組合型・任意組合型を比較してみた!
ここまで、匿名組合型・任意組合型それぞれの仕組みやメリット・デメリットについて述べてきました。それでは、匿名組合型・任意組合型の違いはどういう点なのか比較していきましょう。
匿名組合型 | 任意組合型 | |
投資期間 | 短期(1か月~) | 長期(3年~) |
最低出資額 | 1万円~10万円 | 100万円程度~ |
不動産の所有権 | 無し(事業者が単独所有) | 有り(投資家が共同所有) |
不動産所得税 | 不要 | 必要 |
分配金の税務区分 | 雑所得 | 不動産所得 |
相続税の節税効果 | 無し | 有り |
リスクという面で考えると、匿名組合型はリスクが少なく投資初心者でも参加しやすい仕組み、任意組合型は個々の投資者の責任やリスクも大きめになる、より現物不動産投資に近い仕組みといえます。
「任意組合型」と「匿名組合型」を理解したうえで、不動産クラウドファンディングを始めよう!
本記事では、不動産クラウドファンディングにおける匿名組合型と任意組合型のそれぞれの特徴や2つの違いについて解説しました。
不動産クラウドファンディングを始める際には、任意組合型と匿名組合型のそれぞれのメリットとデメリットを十分に理解し、ご自身の投資スタイルに合った出資形式の案件を選んでみてください。