不動産クラウドファンディングを調べていると、「SPC(特別目的会社)」という言葉を目にすることがあります。しかし、「SPCって何?」「投資家にとってどんなメリットがあるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
SPCを用いたファンドは、他の不動産クラウドファンディングと比較して、より投資家の資産を守るための優れた仕組みを採用していると言えます。その理由としてSPC型ファドは事業者の倒産リスクを軽減する「倒産隔離」の役割を持ち、投資家が安心して資金を預けられるよう設計されているからです。
たとえば、一般的な不動産クラウドファンディングでは、仮に、事業者が倒産した場合、投資対象の不動産が債権回収の対象となり、差し押さえられてしまうリスクが伴います。しかし、SPCを活用した不動産クラウドファンディングでは、投資資金が独立した法人(SPC)で管理されるため、事業者の財務状況に影響を受けにくいという特徴があります。
では、こうした仕組みを持つSPC型の不動産クラウドファンディングは、従来の不動産クラウドファンディングと比べて本当に安全で有利なのでしょうか。また、SPC型の投資にはデメリットや注意点はないのでしょうか。
そこで本記事では、SPCの基本的な仕組みから、投資家にとってのメリット・デメリット、さらには実際にSPC型の不動産クラウドファンディングを選ぶ際のポイントまで分かりやすく解説します。SPCについて正しく理解し、自分に合った投資スタイルを見つける参考にしてください。
・SPCとは何か(仕組み)
・SPCを用いたファンドを選ぶことで、どのような影響があるか
・SPC型のファンドを選ぶ際のポイント
SPC型とは?投資家が知るべき仕組みと役割

不動産クラウドファンディングで投資をする際、投資家にとって重要なのは資産の安全性とリスク管理です。特に、事業者の経営状況に左右されずに投資資金を守る仕組みがあれば安心ではないでしょうか。実は、不動産クラウドファンディングには、SPC(特別目的会社)を活用することで投資家の資産をより安全に管理する仕組みがあります。では、このSPCとは具体的にどのようなものなのでしょうか。
SPC(特別目的会社)とは?
SPC(特別目的会社:Special Purpose Company)とは、特定の事業や資産運用を目的として設立される法人のことです。一般的に、企業が資産の分離やリスク軽減を目的として設立し、金融や不動産などの分野で広く活用されています。
不動産投資の分野におけるSPCの役割は、投資家から集めた資金を適切に管理し、対象となる不動産を取得・運用・売却するための母体として活用されます。
このSPCの大きな特徴は、「倒産隔離」の仕組みを持つことです。つまり、SPCが不動産を保有することで、運営会社が倒産しても投資家の資産が影響を受けにくい仕組みになっています。万が一運営会社が倒産してもSPCの資産は会計上において運営会社の資産とは別の独立した資産として扱われるため、SPCに出資された投資家の資金にまで影響が及ぶことはないとされています。
つまりSPC型を採用しているファンドは、投資家保護を強化するための仕組みを整えているため、より安全性が高いとされています。
SPCの仕組み

SPCとは、不動産クラウドファンディングなどの投資プロジェクトごとに設立される「資産を保有する為の会社」です。投資資金を事業者の財務から分離し、独立した会社として活用されます。
では、SPC型クラウドファンディングの仕組みはどうなっているのか具体的に見ていきましょう。
不動産クラウドファンディングの運営会社が、新しい投資案件を立ち上げる際に「対象資産を保有する為のSPC」を設立します。SPCは法人として登記され、投資対象となる不動産を購入し所有する役割を担います。
投資家が不動産クラウドファンディングに出資すると、その資金は直接SPCに送られ、SPCの専用口座で管理されます。これにより、投資資金が運営会社の財務と混ざることなく、他の用途に流用される心配がありません。
SPCが投資家から集めた資金を使って、不動産を購入・所有します。たとえば、オフィスビルやマンションを取得し、賃貸収益を得るといったかたちです。
ただし、不動産の運営や管理は、SPCではなく、運営会社がSPCと運営委託契約を結んで行うのが一般的で、SPC自体はあくまで不動産を保有するための法人として機能します。
SPCが運用する不動産から得られた賃料収入や売却益は、SPCを通じて投資家に分配されます。投資家は、契約で定められた分配方式に基づき、利益を受け取ります。
このとき、SPCの財務状況が投資家に開示されることで、分配の透明性が高まるのもメリットのひとつです。
SPC型のメリット・デメリット

SPCを活用した不動産クラウドファンディングには、投資家にとって多くのメリットがあります。特に、「倒産隔離」や「透明性の高い運用」といった点は、投資リスクを抑える上で重要な要素です。しかし、いくつか注意すべきポイントもあります。ここでは、SPC型に投資する際の投資家のメリット・デメリットについて解説します。
SPC型のメリット
SPC型を活用することで、投資家には以下のような資産保護やリスク軽減の面でのメリットがあります。
- ①事業者の倒産リスクが軽減(倒産隔離)
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SPC型の最大の特徴は、運営会社が倒産した場合でも、不動産資産がSPCの名義で管理されているため、投資家の資産が影響を受けにくいことです。これは、SPCが運営会社とは完全に独立した法人であるため、万が一運営会社が破綻しても、投資家の資金や不動産が事業者の負債整理の対象にならずに済む仕組みです。
・運営会社が倒産すると、投資家の資金も影響を受ける可能性が高い。
- ②投資資金の流用リスク低減
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SPCを活用することで、投資家の資金がどの不動産に使われているのか、収益がどのように分配されるのかが明確になり、透明性が向上します。そのため、投資家としても安心して資金を投資することができます。
・投資家の資金が、他の用途へ流用されるリスクがある。
・法律上はファンドごとに分別管理する義務があるが、実態として完全に資金が分離されているかは事業者の管理体制次第であり、投資家が確認するのは難しい。
- ③投資案件ごとにリスク管理ができる
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SPCは、投資案件ごとに設立されるケースが多く、リスク分散しやすいのが特徴です。これにより、1つの案件のリスクが他の案件に影響を及ぼすことを防ぎ、投資家の資産をより安全に管理することができます。
・事業者が複数のファンドを運営している場合、1つの案件が失敗すると、事業者全体の財務状況が悪化し、他の案件にも影響を及ぼす可能性がある。
・投資家の資金が事業者の財務状況に左右されるため、個々の案件のリスク管理がしにくい。
SPC型のデメリット
SPC型の仕組みは、投資家の資産保護やリスク管理の面で優れていますが、投資を行う際に理解しておくべき注意点もあります。
- ①SPC型の運用リスク
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SPCは独立した法人ですが、実際の管理は事業者が担うため、運営が適切でない場合、投資家に影響を及ぼす可能性があります。 もし管理体制が不十分だったり、不正な運営が行われた場合、SPCの財務状況が悪化し、投資リスクが高まることも考えられます。
- ②SPC型の財務リスク
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SPCが負債を抱えた場合、返済が優先されるため、投資家への分配が滞るリスクがあります。さらに、不動産の運用が計画通りに進まず、賃料収入が想定より低下すると、投資家が受け取る利回りも減少する可能性があります。
- ③運用コストのリスク
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SPCを設立・維持するためには、法人登記や会計管理、税務処理などのコストがかかります。SPCの運営費用が増える分、従来の不動産クラウドファンディングに比べて投資家のリターン(利回り)が下がる可能性があります。特に小規模な案件では運営コストの影響が大きくなり、想定よりも利回りが低くなるケースもあります。
SPCを用いた不動産クラウドファンディングを選ぶ際の3つのポイント

SPC型の不動産クラウドファンディングは、投資家の資産を守るための仕組みが整っている一方で、案件ごとに特徴やリスクが異なります。そのため、どの案件を選ぶかによって、リターンや安全性に大きな違いが生じることを理解しておく必要があります。
ここでは、SPC型の案件を選ぶ際にチェックすべき3つのポイントについて解説します。
どんな物件に投資するのか
SPC型の不動産クラウドファンディングでは、投資対象の不動産の種類や市場環境によって、リスクとリターンが大きく異なります。そのため、案件を選ぶ際は、物件の特徴や収益性を確認しましょう。
チェックポイント
・物件の種類
住宅、オフィス、商業施設、ホテル、物流施設など
・エリア・市場環境
都心か地方か、再開発の有無、人口動態
・現状の稼働率・賃貸契約の安定性
テナントの契約期間や信用力
・運用期間
短期:3ヶ月~1年、中期:1~3年、長期:3年以上
・配当金の獲得方法
インカムゲイン型・キャピタルゲイン型

このようなポイントをチェックし、自身の投資目的やリスク許容度に合った案件を選びましょう。
どんな運営会社が管理しているのか
SPC型の不動産クラウドファンディングでは、運営を担う事業者の実績や信頼性によって、投資リスクが大きく異なります。SPCは独立した法人ですが、不動産の運用・管理は運営会社が行うことが一般的です。そのため、信頼できる運営会社かどうかをしっかり見極めましょう。
チェックポイント
・過去の実績
元本割れや配当遅延の有無
・財務状況や資本金
負債比率・自己資本比率を確認)
・劣後出資割合
劣後比率が高いほど投資家の元本保全性が高い
・情報開示の透明性
物件の詳細や運用中ファンドの報告等



運営会社の信頼性を見極めることで、より安全性の高い案件を選ぶことができます。
リスク管理のチェック
SPC型の不動産クラウドファンディングでは、投資家の資産がどのように保全されるのかを確認することが重要です。特に、SPCの負債比率や資産管理方法を理解しておくことで、リスクを抑えた投資が可能になります。
チェックポイント
・SPCの資産管理方法
運営会社とSPCで分別管理されているか
・SPCの負債比率
借入リスクを抑えるため、一般的には50%以下が望ましい
・途中解約の可否
基本的に難しい場合が多い



リスク管理がしっかりした案件を選ぶことで、投資資産を守りながら安定した運用が可能になります。
SPC型の活用事例


SPCを活用した不動産クラウドファンディングにはいくつかの事業者がありますが、その中でも「Jointo α」は、投資家保護の仕組みや透明性の高さに優れたサービスとして注目されています。Jointo αでは、SPCを活用することで投資家の資産を守りながら、不動産投資の手間を減らし、安定した運用を実現しているのが特徴です。それでは、Jointo αの特徴や、具体的なSPCの活用事例について解説します。
Jointo αの特徴
Jointo αは、穴吹興産株式会社が運営する不動産クラウドファンディングサービスです。
同社は、四国・中国地方を中心にマンション開発や不動産事業を展開する東証スタンダード上場企業であり、その豊富な不動産事業の実績や経験を活かし、全国各地から安定した運用が期待できる投資商品を提供しています。
- 投資対象の不動産はあなぶき興産グループが厳選
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Jointo αで提供される投資案件は、あなぶき興産グループが持つ豊富な不動産開発・運用経験を活かし、厳選された物件が対象となります。これにより、収益性・資産価値の高い不動産への投資が可能となり、リスクを抑えつつ安定したリターンを得ることが期待できます。
- 投資家向けの情報開示が充実している
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Jointo αでは、募集の詳細に加え、物件概要や想定できるリスクについても細かく開示しています。情報の不透明性が問題視されていた不動産クラウドファンディングですが、Jointo αの商品は透明性があり、投資家が安心して投資判断を行えるよう配慮されています。
- いまだ元本割れ・配当遅延なし
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近年注目されている不動産クラウドファンディングですが、あなぶき興産が運営する「Jointo α」は、2019年からと不動産クラウドファンディングが日本で展開され始めた頃から取り入れています。約5年間で30件以上のファンドを扱ってきましたが、いまだ一度も元割れや配当遅延がなく、投資家の皆様から安心して投資できると大変好評をいただいております。
※本サービスは元本保証をするものではございません。投資リスクについては各ファンドの商品詳細をご確認ください。
Jointo αでSPCを活用した事例
Jointo αでは、2025年に初めてSPC型の不動産クラウドファンディング商品を提供しました。この新たな仕組みを導入することで、投資家の資産管理の透明性を向上させ、より安全性の高い投資環境を実現しています。
対象物件 | ロイヤルパークホテル倉敷 |
募集金額 | 1,164,500,000円 |
予定分配率 | 年利5.0% |
運用期間 | 3年間(2025年3月6日~2028年3月5日 |
最低投資額 | 10万円以上(1口~) |
※こちらの募集はすでに終了しております。
SPC型ファンドの仕組みと特徴
このファンドでは、特例事業者であるSPCが「ロイヤルパークホテル倉敷」を取得し、運営会社のあなぶきエンタープライズへ賃貸するスキームを採用しています。投資家への分配は、賃料収入と物件売却時の利益を原資とし、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を得られる仕組みになっています。さらに、SPCを活用することで、運営会社の倒産リスクから投資家の資金を守る「倒産隔離」の仕組みを導入していることで、投資家の資金がより保全されやすくなっています。


Jointo αの「SPC型アルファアセットファンド1号」は、SPCを活用した安全性の高い投資スキームと魅力的な特典を備えたファンドとして、リピーターだけでなく、新たな投資家様からも注目を集めました。Jointo αでは、従来の不動産クラウドファンディングに加え、SPC型の商品を導入したことにより、投資家の目的に応じた投資スタイルを選択できるようになりました。


SPC型の不動産クラウドファンディングで安全に投資を始めよう!


SPCを活用した不動産クラウドファンディングは、投資家の資産を守る「倒産隔離」の仕組みや、資産管理の透明性向上といったメリットを持つ投資手法です。これにより、運営会社の経営状況に左右されにくく、安定した収益を期待できます。一方で、SPCの設立・管理にはコストがかかるため、手数料の影響を考慮する必要があるほか、運営会社の信頼性によってリスクの大きさが変わるため、慎重に商品を選ぶことが重要です。
あなぶき興産が運営するJointo αでは、2025年に初めてSPC型の不動産クラウドファンディングを提供いたしました。本ファンドの募集は既に終了しておりますが、今後も様々なファンドを取り扱っていく予定です。今後の最新情報を見逃さないためにも、事前に会員登録しておくことをおすすめします。