「REIT(リート)」を活用すれば、数万円の資金で東京の一等地オフィスビルや全国のショッピングモールなどに投資できます。また、投資額に応じて家賃収入や売却益の恩恵を受けられ、株式と同じように証券取引所で売買できます。
実際の不動産投資では必要な物件選びや管理の手間は一切不要で、プロが厳選した優良物件のポートフォリオに投資できる点がREITの魅力です。REITの仕組みをやメリット、デメリットなどを正しく理解して、賢く活用しましょう。
- REITの仕組みと種類
- REITのメリットとデメリット
- 自分で投資物件を選べる投資手法
REITの仕組みを確認

REIT(リート)とは、「Real Estate Investment Trust」の略称で、日本語では「不動産投資信託」と訳されます。投資家から集めた資金でオフィスビルやマンション、商業施設、ホテルなどの収益不動産を購入・運用し、その利益を分配金として投資家に還元する仕組みです。REITは証券取引所に上場されているため、株と同じように簡単に売買することができる点が大きな特徴です。

- ■主な収入源
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REITの主な収益源は以下の2つになります。
- ・インカムゲイン(賃料収入)
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保有している不動産から発生するテナントの家賃や共益費などの定期的な収益。
- ・キャピタルゲイン(売却益)
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不動産の価値が上昇した際に売却し、得られる差益。
REITは法律により、利益の90%以上を分配金として投資家に還元することで法人税が免除される仕組みとなっており、他の金融商品と比べても高い利回りを期待しやすいのが魅力です。
- ■運用体制
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REITの運用は資産運用会社が担い、物件の取得、テナントの管理、売却のタイミングまでを一括して管理します。投資家は専門家に全てを任せることで、手間なく不動産投資ができるのが大きなポイントです。管理の煩雑さや専門知識が必要ないため、投資初心者でも始めやすい投資手法といえるでしょう。
REITの種類

REITには、投資対象となる不動産の種類がさまざまで、どの種類の不動産に投資するかによって、REITの収益性やリスクの特性も変わってきます。ここでは代表的な7種類のREITについて解説します。
①オフィスリート
オフィスビルを主な投資対象としたREITです。東京・大阪などの都市部にある大型ビルや中規模ビルを保有し、企業などのテナントから賃料収入を得ています。
- メリット
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- 長期契約による安定収入:大企業との複数年契約が中心で、収益の予測が立てやすい。
- 立地による空室リスクの低減:東京や大阪といった都心部の物件が多く、高い稼働率が期待できる。
- 資産価値の上昇が見込める:リニューアルや再開発によって不動産の評価が高まる可能性がある。
- リスク
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- 景気変動の影響を受けやすい:オフィス需要は景気に連動しやすく、企業の退去や賃料交渉が発生しやすい。
- テレワーク普及による需給変化:オフィス縮小の流れが稼働率を下げる可能性がある。
- 新規供給過多による競争激化:大量供給が続くと賃料の下落リスクが高まる。
②住宅リート
単身者向けワンルームマンションやファミリー向け賃貸住宅、サービスアパートメントなどが主な投資対象のREITです。
- メリット
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- 生活需要に基づく安定性:居住用不動産は景気に左右されにくく、安定的な需要がある。
- 都市圏での高入居率:特に単身世帯や共働き世帯が多い地域では継続的な入居が期待できる。
- 柔軟な賃料設定が可能:入退去のサイクルが早く、時勢に応じた価格調整がしやすい。
- リスク
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- 地方エリアでの空室リスク:人口減少が進む地域では収益性が下がる可能性がある。
- 維持管理コストの頻発:原状回復や修繕が入退去ごとに必要になる。
- 大幅な収益成長は見込みにくい:賃料水準が一定で、利回りの伸びは限定的。
③商業施設リート
ショッピングセンターや百貨店、スーパーマーケットなどを主な投資対象であるREITです。
- メリット
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- 大手テナントによる長期契約:安定した収益を得やすいビジネスモデルが構築されている。
- 好景気時に収益が伸びやすい:売上連動型賃料により、商業活動が活発な時期に高収益を実現できる。
- 立地により高集客が可能:駅前や住宅地近隣といった好立地では稼働率が高い傾向にある。
- リスク
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- EC市場の拡大による影響:ネット通販の普及で来店客数が減少する可能性がある。
- 主要テナント依存の危うさ:大口テナントの撤退は収益への打撃が大きい。
- 消費マインドの変化で変動が生じる:不況期には売上と賃料収入が下がりやすい。
④物流施設リート
大型倉庫、配送センター、冷蔵施設、都市近郊の物流拠点などを主な投資対象のREITです。
- メリット
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- EC市場の拡大で需要が上昇中:ネット通販の急成長により、物流施設へのニーズが高まっている。
- 長期契約による収益安定:物流業者との長期リース契約が中心で空室リスクが低い。
- 立地・機能による競争力が高い:高速ICや空港近接など、優良立地の施設は高稼働が期待できる。
- リスク
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- 特定テナント依存のリスク:1社に収益を大きく依存すると、退去時の影響が深刻になる。
- 地方立地の流動性が低い:再誘致が困難な地域では空室期間が長引きやすい。
- 物流需要の鈍化に伴う影響:経済状況や流通構造の変化によって需要が縮小する可能性がある。
⑤ホテルリート
ホテルや旅館などを主な投資対象とするREITです。
- メリット
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- 観光需要に支えられた高収益性:インバウンドやイベント開催による一時的な収益増が期待できる。
- 稼働率と客単価の調整が柔軟:市場状況に応じて価格戦略を調整しやすい。
- 宿泊施設の特性で短期間に収益化が可能:長期入居を必要とせず即収益につながりやすい。
- リスク
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- 外部要因に極めて敏感:パンデミックや災害、国際情勢によって大きく稼働が変動する。
- 収益の季節変動が大きい:繁忙期と閑散期の差が激しく、安定配当が難しい。
- 運営企業への依存度が高い:オペレーターの経営状態がREIT収益に直結する。
⑥ヘルスケアリート
単身者向けワンルームマンションやファミリー向け賃貸住宅、サービスアパートメントなどが主な投資対象のREITです。
- メリット
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- 生活需要に基づく安定性:居住用不動産は景気に左右されにくく、安定的な需要がある。
- 都市圏での高入居率:特に単身世帯や共働き世帯が多い地域では継続的な入居が期待できる。
- 柔軟な賃料設定が可能:入退去のサイクルが早く、時勢に応じた価格調整がしやすい。
- リスク
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- 地方エリアでの空室リスク:人口減少が進む地域では収益性が下がる可能性がある。
- 維持管理コストの頻発:原状回復や修繕が入退去ごとに必要になる。
- 大幅な収益成長は見込みにくい:賃料水準が一定で、利回りの伸びは限定的。
⑦複合型リート
オフィス・住宅・商業施設・物流など、複数種類の物件に投資するREITです。
- メリット
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- リスクを軽減できる:複数の業種にまたがることで景気変動に強くなる。
- 経済情勢に応じた柔軟な運用:複数の業種に投資することで、不調な業種を他で補いやすい。
- 中長期での安定性:広範な資産運用により、全体としてバランスの取れた成長が期待できる。
- リスク
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- 構成が見えにくい:投資対象が多様なため、個別の状況をつかみにくい。
- 偏りが潜むリスク:見かけは複合でも、実態が特定用途に偏っている場合がある。
- 運用方針が不透明な場合も:どの種類の不動産にどれだけ投資しているか、今後の運用方針などが投資家に十分開示されていないケースがある。
REITの魅力とメリット

REITが多くの投資家から支持されるのには、数多くの魅力とメリットがあるからです。ここでは、個人投資家にとって特に注目される8つのメリットを紹介します。
少額から不動産投資を始められる
最大のメリットは、少額から始められる点です。実際の不動産投資(現物不動産投資)では、物件を購入するために数千万円から数億円といった多額の自己資金やローンが必要になります。
しかし、REITは証券会社を通じて数万円から数十万円程度で購入できます。銘柄によっては10万円以下で投資できるものもあり、資金に余裕のない初心者でも参入しやすいのが特徴です。
流動性が高い
REITは株式と同様で証券取引所に上場されているため、市場が開いている時間帯であれば自由に売買が可能です。
現物不動産の場合、売却したくても買い手が見つかるまでに数ヶ月、場合によっては1年以上かかることもあり、すぐに現金化するのは困難です。その点、REITは売りたい時にすぐに売却して現金化できるという安心感があり、他の不動産投資にはない柔軟さを備えています。
透明性が高い
上場しているREITは金融商品取引法のもとで情報開示が義務付けられており、保有物件や収支状況、分配金情報などが定期的に公開されています。
- 保有物件の情報
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どのような物件を、いくらで取得し、どれくらいの賃料収入があるのか、稼働率はどのくらいか、といった詳細な情報がウェブサイトや決算資料で公開されています。
- 財務状況
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借入金の状況や資産総額など、REIT投資法人の財務状況も定期的に開示されます。
- 価格情報
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証券取引所でリアルタイムに価格が公表されており、誰でも公正な価格で取引できます。
このように、投資家は運用内容を確認しながら判断できるため、安心して資金を預けることができます。
利回りが高い
REITは、他の金融商品と比較して高い利回り(分配金利回り)が期待できる点も大きな魅力です。
REITの利回りが比較的高い理由は、利益の90%以上を分配すれば法人税がかからないという税制優遇があるためです。その結果、収益がそのまま投資家に効率よく分配され、高い利回りにつながっています。
長期的に安定した収入が期待できる
REITの主な収益源は、保有する不動産からの継続的な賃料収入です。景気変動によって多少の増減はあるものの、賃料収入は比較的安定しているため、REITの分配金も長期にわたって安定的に得られることが期待できます。
住宅リートやヘルスケアリートのように、景気の影響を受けにくい物件も多く、安定したインカムゲイン(分配金収入)を目的とする長期投資に適していると言えるでしょう。
分散投資ができる
REITは、一つの銘柄を購入するだけで、そのREITが保有する複数の、時には数十から数百もの不動産に分散投資したことと同じ効果が得られます。さらに、オフィス、住宅、商業施設など、異なる種類の物件を複数組み合わせることで、より効果的な分散投資が可能になります。
REITを活用すれば、個人では難しい大規模で多様な不動産への分散投資を手軽に実現できます。
NISAに対応している
REITはNISA(少額投資非課税制度)の対象商品であり、分配金や売却益にかかる税金を一定枠内で非課税にできます。投資効率を高めたい方や、節税しながら資産形成したい方にとっては大きなメリットとなります。
REITのデメリットや注意点

REITは魅力的な投資手段である一方で、リスクや制限も存在します。投資を始める前に、これらの注意点をしっかりと理解しておくことが極めて重要です。
元本割れのリスクがある
REITは預金とは異なり、元本が保証されている金融商品ではありません。証券取引所で売買されるため、その価格は常に変動しています。購入した時よりも価格が下落した状態で売却すれば、元本割れ(投資した金額を下回ること)が発生します。
銘柄を分散して投資する、下落時にも慌てて売却せず長期保有を前提とする、景気に左右されにくい住宅リートなどを選ぶことでリスクを軽減できます。
分配金が変動するリスクがある
REITの魅力である高い分配金も、常に一定であることが保証されているわけではありません。REITの収益は、不動産事業の成果に直結しているため、分配金は増えることもあれば減ることもあると認識しておく必要があります。
- 稼働率の低下
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テナントが退去して空室が増えると、物件の稼働率が下がり、それに伴って賃料収入が減少し、分配金も下がる恐れがあります。
- 賃料の下落
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景気の悪化などにより、周辺の賃料相場が下落すると、テナントとの契約更新時に賃料を引き下げざるを得なくなり、収益が減少します。
- 修繕費用の発生
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保有物件で大規模な修繕が必要になった場合、その費用が収益を圧迫し、一時的に分配金が減少することがあります。
複数物件に分散投資しているREITを選ぶ、用途の異なるリート(住宅・物流・商業など)を組み合わせておくと収益変動の影響を抑えられます。
投資法人の倒産や上場廃止リスクがある
可能性としては投資法人が経営破綻したり、上場基準を満たせずに上場廃止となったりするリスクも存在します。
もし倒産すれば、保有不動産は売却され、借入金などを返済した後に残った資産が投資家に分配されますが、投資元本を大幅に下回る可能性が高いです。上場廃止になった場合、市場での売買が非常に困難になり、流動性が著しく低下します。
安定した運用を目指すには、財務基盤がしっかりしていて、一定の規模を持つREITを選ぶことが重要です。投資前にはIR資料や格付け、物件の分散状況などをしっかり確認しましょう。
配当控除を受けられない
株式投資で得た配当金は、確定申告をすることで「配当控除」という税額控除を受けられ、税金の一部が還付される場合があります。
一方、REIT(不動産投資信託)の分配金は税制上「配当所得」に分類されますが、配当控除の対象にはなりません。これは、REITは利益の大部分を分配すれば法人税が課されない仕組みであり、二重課税が生じないためです。見た目は同じ「分配」でも、商品によって税の取り扱いが異なる点には注意が必要です。
NISA口座を利用することで、REITの分配金や売却益にかかる税金が非課税となり、手取り収益を最大化できます。特にNISAを併用すれば、長期的な資産形成により効果的です。
自分で投資物件を選定できない
REITは、プロが選んだ複数の物件にまとめて投資する商品です。これは、物件選定の手間がかからないというメリットの裏返しでもあります。
投資家は、REITの銘柄を選ぶことはできますが、そのREITが保有する個別の物件を自分で選ぶことはできません。また、物件の売却タイミングなどもすべて運用会社に委ねられます。
「自分の好きな街の、応援したい特定の施設に投資したい」「自分の目で見て納得した物件にだけ資金を投じたい」といった、より能動的で主体的な投資をしたい方は、不動産クラウドファンディングのように個別物件を選べる投資商品を活用するのも一つの方法です。
投資物件を選びたい方は不動産クラウドファンディングがおすすめ

ここまでREITの仕組みやメリット・デメリットを詳しく見てきました。REITは少額からプロが運用する多様な不動産ポートフォリオに投資できる、非常に優れた金融商品です。
しかし、「どの物件に投資するか」を自分で選ぶことはできません。すべての判断は運用会社に委ねられるため、「自分の目で内容を見て納得したうえで投資したい」という方には、やや物足りなく感じるかもしれません。
そういった方におすすめなのが、「不動産クラウドファンディング」です。
不動産クラウドファンディングとは?
不動産クラウドファンディングは、インターネットより多くの投資家から資金を集め、その資金を元に特定の不動産プロジェクト(マンション一室、商業ビル、ホテルなど)に投資する仕組みです。
不動産クラウドファンディングがおすすめな理由
REITのデメリットを補い、さらに多くのメリットを享受できるのが不動産クラウドファンディングです。
- ■自分で選べる「実感」
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ファンドごとに物件情報(所在地、写真、事業計画など)が詳細に開示されており、自分が納得した物件だけに投資できます。「自分の資金があのビルになっている」という投資の実感が得られます。
- ■小口投資が可能:1口1万円~
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REITよりもさらに少額の1口1万円程度から始められるサービスが多く、おためしで不動産投資を体験できます。また、複数のファンドに分散投資することで、1つの物件に依存せず、リスクを抑えながら資産を育てることができます。
- ■運用期間や分配方法を比較しやすい
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REITは基本的に上場しており、売却タイミングは自由ですが、価格が変動するためタイミングによっては損失も発生します。
一方、不動産クラウドファンディングでは運用期間が初めから定められており、満期まで保有することで元本と分配金を受け取る仕組みになっています。
1年未満の短期型、2〜3年の中期型、5年以上の長期型などがあり、目的やライフスタイルに合わせて選択できます。
- ■値動きのストレスがない
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運用期間中は市場での価格変動がないため、日々の値動きに一喜一憂する必要がありません。腰を据えて満期を待つことができます。

REITがあらかじめ組まれた複数の不動産に自動的に分散投資するのに対し、不動産クラウドファンディングでは、投資家自身が物件を選び、自由に分散先を決めることができます。2つを併用すれば、商品性・投資対象・運用期間の分散が図れるため、リスク管理の幅がさらに広がります。
REITは手軽さと上場商品ならではの流動性が魅力ですが、「自分の意思で物件を選びたい」「リスクや期間をコントロールしたい」という方には、不動産クラウドファンディングが最適です。
物件や期間、想定利回りなどを見比べながら、あなたに合った投資スタイルを実現してみてはいかがでしょうか。
よくある質問

【監修】

穴吹興産株式会社 不動産ソリューション事業部
アセットマネジメントグループ課長 穴吹 章彦
【資格】
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
【経歴】
ソリューション事業部の業務に7年従事し、投資用不動産のアセットマネジメント業務を経験。現在は不動産特定共同事業におけるファンドの組成業務に従事し、投資家との契約業務全般を担当。不動産クラウドファンディングの仕組みや専門用語を解説しながら、情報発信を行っている。