不動産クラウドファンディングの仕組みとは? 始め方やメリット・デメリットに加えて他の投資との違いも解説!

不動産クラウドファンディングの仕組みや始め方

不動産クラウドファンディングは、その仕組みから手軽に始められる投資のカタチとして注目されています。とはいえ、投資である以上、リスクもあって安易に始められないと考えている方も少なくないことでしょう。この記事では不動産クラウドファンディングについて、仕組みや始め方、メリット・デメリットに加えて他の投資との違いも紹介・解説します。

目次

不動産クラウドファンディングの仕組み

仕組み解説の文字

不動産クラウドファンディングは手軽に不動産投資を始められることもあり、注目を集めている投資の手法です。ここでは、その仕組みを解説します。

不動産特定共同事業法が根拠法

不動産クラウドファンディングは数ある投資手法のなかでは新しい部類に入ります。不動産特定共同事業法が根拠法です。対象となる不動産は宅地または建物で、不動産取引には売買、交換、賃貸借が含まれます。不動産特定共同事業法は、2017年の改正で小規模不動産特定共同事業の登録が規定され、許可を得ずとも小規模不動産特定共同事業者として参入が可能になりました。2019年には空き家再生の促進にクラウドファンディングを活用するなどの目的で、より参入しやすいように改正されています。

また、不動産クラウドファンディングといえば同法に規定された電子取引業務を指しており、インターネットで契約締結の申し込みを募る取引形態です。

多数の出資者により少額投資が可能

不動産クラウドファンディングでは、多数の出資者が共同で出資を行うため、1人でまとまった資金を用意する必要がありません。最低1万円からの少額投資が可能であり、リスクを抑えた投資ができます。投資先の物件はさまざまですが、事業者(運営会社)によって異なり、商業ビルや学校、ホテル、集合住宅でも1棟マンション(まるごと)もあれば区分マンション(1室)もあるなどさまざまです。

任意組合型

複数の出資者が共同して不動産取引を事業として行い、一部の者に業務執行を委任し、その収益を分配する契約(2条3項1号)で実施される不動産クラウドファンディングを任意組合型と呼んでいます。任意組合とは、民法667条に規定された法人格をもたない組合です。任意組合型で投資した不動産は出資者が共同で所有します

匿名組合型

不動産取引を行う相手方に対し、一方当事者が出資して運用の収益を分配する契約(2条3項2号)で実施される不動産クラウドファンディングを匿名組合型と呼んでいます。任意組合型の契約では不動産を出資者が共同で所有するのに対し、匿名組合型では不動産取引を行う相手方である事業者が当該不動産を所有するため、投資家である出資者が物件の名義人になることはありません。匿名組合における出資者を匿名組合員と呼びます。

マスターリース契約

不動産クラウドファンディングにはマスターリース契約を使った型があります。マスターリース契約とは、たとえば借主が転貸するためのマンションを1棟全部貸し出す賃貸借契約です。借主は各部屋を別の入居者に貸し出すサブリースを行います。マスターリース契約もまとめてサブリースと呼ぶことがありますが、所有者とサブリース事業者間の契約がマスターリース契約であり、サブリース事業者と入居者間の契約がサブリース契約です。

マスターリース契約では満室か否かにかかわらず貸し出しているため、空室が生じて賃料を得られないといったリスクを回避できる点が大きなメリットです。不動産特定共同事業法では、不動産取引を行う相手方に対し、一方当事者が自己が共有する不動産を賃貸し、または賃貸を委任して運用の収益を分配する契約(2条3項3号)で実施される不動産クラウドファンディングとなります。

優先劣後出資制度

不動産クラウドファンディングで投資を行う際、欠かさず確認したいのが優先劣後出資制度を採用しているか否かです。優先劣後出資制度では、投資家を優先出資者に、事業者を劣後出資者に定義して損失の処理を行います。運用の結果がマイナスであれば、まずは劣後出資者である事業者の出資分をその損失に充当し、不足があれば優先出資者である投資家の出資分を充当するため、完全ではないものの投資家の保護が可能です。

劣後出資の一般的な割合は10~30%の範囲が多く、20%程度だと考えておくとよいでしょう。とはいえ、案件(ファンド)ごとに異なるため、契約する前にキチンと確認する必要があります。

不動産クラウドファンディングを始めるには

HOWTOと書かれたキューブとルーペ

ここでは、不動産クラウドファンディングで投資を始めるやり方について解説します。不動産クラウドファンディングのステップは大きく分けて下記の3つです。

サービスサイトを選んで投資家登録する

最初のステップは投資家としての登録です。まず、どのサービスサイトに登録するかを決める必要があります。サービスサイトによって募集している不動産クラウドファンディングの件数や案件が異なるため、サイトの情報をよく確認する必要があるでしょう。気になる案件が分散しておりサービスサイトを絞り切れないといった場合は、複数のサービスサイトに登録する手もあります。

まずはメールアドレスの入力です。この時点でパスワードを決めるケースもあれば、メールアドレスだけのケースもあります。自動返信で届いたメールに記載されている案内にしたがって個人情報の入力など必要項目を入力して投資家登録が終われば、不動産クラウドファンディングを始めることができます。利用規約や個人情報保護に関する同意をする前に、記載内容をしっかりと読んでおきましょう。

不動産クラウドファンディング投資には専用口座への入金が必要です。投資家登録が終わったら、投資したいときに慌てないように、タイミングを見て早めに専用口座に入金しておくとよいでしょう。

案件を選んで応募する

サービスサイトを選ぶ段階で投資したい案件が見つかっている場合は、そのまま応募へと進みます。これといって投資したい案件がない場合は、新着情報をチェックして投資したいと思える案件が出るのを待ちましょう。

サービスサイトに掲載されている案件の情報は事業者によって異なります。とはいえ、不動産クラウドファンディングの募集に欠かせない情報は載っています。一般的な掲載・記載項目の例は以下のとおりです。

・物件名と所在地
・物件の概要(特徴や竣工日その他の重要な情報)
・周辺情報
・募集開始日・募集期間
・残り時間
・募集方式(先着順か抽選か)
・募集総額・1口の出資額
・現在の出資総額
・予定する分配率・利回り
・契約期間
・運用開始日・運用終了日
・償還・分配日

これらの情報を検討して投資を決断すれば、応募して契約、運用開始を待ちます。応募した案件が必ず契約に至るわけではない点に注意が必要です。先着順であれば早いもの勝ちですが、抽選の場合は最初の応募者であっても応募者多数で落選する可能性があります。

運用・分配金を受け取る

無事に運用が開始されれば、予定の分配率を上回るように祈りながら終了を待つだけです。運用が終われば利益に応じた分配金を受け取ります。不動産クラウドファンディングでは事業者に運用を任せるため、基本的に投資家が何かしようとしてもできることはありません。それだけに、事業者選び、案件選びが重要です。

必要書類など

不動産クラウドファンディングを始めるにあたって必要な書類などは、一般的に以下のとおりです。

本人確認書類

投資家としての登録には本人確認書類が必要になります。本人確認に使える書類は、運転免許証や個人番号カード、パスポート(写真貼付面と所持人記載面)、健康保険証、写真付き住民基本台帳カードなどです。外国籍の方の場合は、在留カードや特別永住者証明書も該当します。使用する書類によって表面のみであったり両面であったり、またその他の条件があるケースがあるため、その都度確認が必要です。

投資の際に必要な書類

不動産クラウドファンディングでは、一般的に登録内容や本人確認書類の内容に変更がなければ、投資の際に改めて必要になる書類はありません。

不動産クラウドファンディングのメリット

MERITの文字

ここでは不動産クラウドファンディングの代表的なメリットについて解説します。

1万円の少額から開始できる

不動産クラウドファンディングは既に述べたように、小規模不動産特定共同事業によって少額の投資が可能です。1口あたりの金額は案件によって異なりますが、最低1万円から投資を開始できます。

インターネットで完結

投資家登録から案件への応募、その他の手続きが基本的にインターネットで完結します。自宅に居ながらにして投資を行えるため、少額投資が可能な点と合わせて、始めるハードルは低いといえるでしょう。

運用はお任せ

投資といえば運用の才能やノウハウ、経験値が必要なモノとのイメージが強いかもしれません。しかし、不動産クラウドファンディングの運用はお任せです。不動産投資だけでなく、その他の投資をやったことがない方でも無理なく始められます。そのため、一般的な居住用物件だけでなく、テナントビルや病院、学校、ホテルなども投資対象として選択可能です。

利回りが比較的安定している

不動産クラウドファンディングは他の投資と比較して、利回りが安定しているといえるでしょう。株式投資のような乱高下はしにくいといえます。また、仮に元本割れを起こすような事態になっても、優先劣後出資制度を使っていれば損失を抑えることが可能です。

不動産クラウドファンディングのデメリット

手のひらにデメリットの吹き出し

メリットが多い不動産クラウドファンディングですが、いくつかデメリットもあります。

元本割れ

投資につきものとされるのが元本割れです。投資額に対して回収額が少ないことを元本割れと呼びます。簡単にいえば投資で損をした状態です。元本割れにはなっていなくても、手数料等の費用を合算して考えた場合には、トータルで損をするケースもあります。

途中で辞めにくい

不動産クラウドファンディングは運用期間が決められており、途中解約は基本的にできないと考えておくべきです。解約できる場合でも、手数料が発生するケースがあるなどデメリットに注意する必要があります。

資金の融資を受けられない

不動産クラウドファンディングは、自分で不動産を購入する不動産投資(現物投資)とは異なり、金融機関から資金の融資を受けることができません。そのため、自己資金を超える投資を希望する方には向かないといえます。融資を受けられない点はデメリットであると同時に、債務を抱えなくて済むためメリットにもなるといえるでしょう。また、融資を受けなくても少ない投資金額で投資家になれます。

集中投資や長期投資は高リスク

有利だと判断して選んだ投資案件が元本割れを起こすこともあります。そのため、集中投資は高リスクでデメリットの一つといえるでしょう。また、長期にわたる案件は想定外の社会情勢の変化などの影響を受けやすく、やはり高リスクでデメリットです。

不動産投資との違い

家のシルエットに不動産投資の文字

不動産クラウドファンディングとよく比較される投資として不動産投資、REIT、ソーシャルレンディングがあります。まずは不動産投資との一覧比較です。投資対象や資金、利回り、税制などの点で不動産クラウドファンディングと不動産投資は違います。

対照的な項目不動産クラウドファンディング不動産投資
投資対象マンションなどの居住用物件に限らず、商業ビルや学校、病院、ホテルなどさまざま入居者からの家賃収入が得られるマンションなどがメイン
資金・最低10,000円から投資可能
・金融機関の融資は受けられない
・まとまった資金が必要
・融資を受けて自己資金を超える投資が可能
利回り3~5%以上も期待できる約3~8%前後
税の区分雑所得(任意組合型は不動産所得※)不動産所得で売却は譲渡所得
特徴運用は事業者にお任せ物件の管理方法を考える必要あり

※一般に不動産クラウドファンディングでイメージされている、事業者が募集して運用する案件に投資家が申し込む契約は「匿名組合型」と呼ばれる形態です。「任意組合型」の不動産クラウドファンディングとは、共同で不動産投資事業を行う投資家が、一部の人に業務執行を委任する契約を意味します。

REITとの違い

建物模型とREITの文字

不動産クラウドファンディングとREIT(Real Estate Investment Trustの略、不動産投資信託で日本ではJ-REIT)は、不動産投資のようなまとまった資金が必要ない点などで似ている部分もありますが、流動性など違いも大きいといえます。

対照的な項目不動産クラウドファンディングJ-REIT
流動性基本的に中途解約は難しく流動性は低い・短期の現金化に対応
・中途解約はできないが市場で売買できるため流動性は高い
資金・最低10,000円から投資可能
・金融機関の融資は受けられない
数万円から投資可能
利回り3%~5%以上も平均3%強
税の区分雑所得(任意組合型は不動産所得)配当所得で売却は譲渡所得
特徴人気案件では申し込んでも投資できるとは限らない不動産を購入して運用する投資法人への投資で投資証券を購入

ソーシャルレンディングとの違い

金利の文字と矢印

ソーシャルレンディングとの違いについて解説します。

対照的な項目不動産クラウドファンディングソーシャルレンディング
投資対象マンションなどさまざまな不動産資金需要者で不動産取引に限らない
収益賃料や売却益を分配金利を分配
特徴元本割れのリスクがあるが優先劣後出資制度などで低減可能貸し倒れのリスクがある

ソーシャルレンディングは、不動産取引に限らず資金を必要としている資金需要者に貸し付けて得る金利収入を分配する投資です。仕組み的には不動産クラウドファンディングと似ていますが、事業者は貸金業者でもあります。

結果を左右する事業者選び

人差し指を立てる女性

不動産クラウドファンディングの結果を左右する大きなポイントは事業者選びです。取扱案件数や案件の優劣、情報開示、実績や過去のトラブル等は事業者によって異なります。よりよい結果を望むなら、信頼できる実績豊富な事業者を選ぶことが重要です。事業者選びにおいて案件や最低投資金額、物件の情報はサービスサイトをチェックすることでわかります。しかし、信頼性の高さについては単純な数字や言葉では確認できない部分があり、どれだけ情報収集を行うかにかかっているといえるでしょう。

不動産クラウドファンディングの仕組みは難しくない

不動産クラウドファンディングは、少ない金額から投資を始めたい方におすすめの投資法です。サービスサイトに登録することで、いつでも投資を開始できます。途中解約が難しく、金融機関の融資が使えないため自己資金を超える運用はできないものの、運用をプロの業者にお任せで、さまざまなタイプの不動産を投資対象に選べるなど、メリットは大きいといえるでしょう。このように取り組みやすい仕組みの不動産クラウドファンディングで、投資家デビューを考えてみてはいかがでしょうか。

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